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六甲全縦 ナイトメア



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平成19年4月28日(土)〜29日(日)  メンバー 私だけ

六甲全山縦走路 須磨浦公園から宝塚へ行きたいな

2万5千分の1地形図「須磨」、「前開」、「神戸首部」、「有馬」、「宝塚」を参照すること。


須磨浦公園駅から旗振山・おらが山へ

初めての六甲全山縦走をナイトハイキングで歩くことを計画したのは二ケ月ほど前だ。その間に妙法寺や丸山の住宅地の分かり難いルートを歩いたり、宝塚までの東六甲縦走路を歩いたりして、分割ではあるが縦走コース全体を歩くことができた。でも、なぜ昼間ではなく夜の六甲を歩きたくなったのかは、二ケ月も前のことなので記憶が定かではない。

4月に入ってのヒノキ花粉と週末の天候のせいで、2週連続して山に登っていないのでどうかなと思いつつ、ゴールデンウィーク初日からの連続の晴れの天気予報を信じ4月28日(土)に決行した。

12:15
山電須磨浦公園から歩き始める。連休初日の快晴の行楽日和なのだが駅前に人影は少ない。須磨のコンビニで昼・夜・朝の三食分とその間にお腹がすいたら食べるおにぎりやパン、それからペットボトルの飲み物などを買い込みザックがいつもより重い。

今回の私の六甲全山縦走のお約束語事は、

  1. 全山縦走路の標柱に忠実に従い、寄り道はしない。
  2. セルフポートレイト写真はいつもよりも減らす。花の写真などもってのほか。
  3. 途中リタイアの時は、ビバークし夜明けを待つ。
  4. けして急がずに、宝塚到着の目標は24時間後。

の四つで、3番までは守れたが4番が難しかった。

山電須磨浦公園駅を出発

須磨浦公園駅の西側にかかる跨線橋(敦盛橋)を渡り、いきなり始まる石段の道(近道の表示あり)を登り始める。この階段は最終的には鉢伏山頂上に建つ回転展望閣まで続いている。でも、帰宅後調べたら神戸市主催の全山縦走は近道階段を使わないことを知ったが後の祭り。

鉢伏山の石段を登る、登る

12:41
もう少しで須磨ロープウェイ山上駅に辿り着く手前に東屋がある展望台があり、まだ登り始めて20分ほどだが、ここで昼食(ニギリズシ 580円)にする。

天気はよいのだが、明石海峡大橋がようやく見えるぐらいの霞みかたで、一千万ドルの夜景を楽しむのが大きな目的なのだが少し心配になってきた。そうかやっと思い出した、六甲ナイトハイキングを計画したのは夜景を満喫するためだったんだ。

鉢伏山頂上近くの展望台からの
ぼっーとした眺め
12:54
10分ちょいでお昼ご飯を食べて、写真を撮って出発。

ロープウェイ山上駅を過ぎると分岐があり、鉢伏山頂上へと、頂上を巻く道に分かれている。六甲全山縦走路はなぜか巻き道の方を示しているが、雑多な施設のある頂上を通るよりは新緑の気持ちのよい巻き道を行く方が楽しい。

全山縦走路は鉢伏山頂上を通らない

13:10
鉢伏山を巻いて、最後のコンクリ階段道をこなし、旗振山頂上に到着。創業昭和4年の旗振茶屋からは賑やかな会話が聞こえてくる。入ってしまったら「おでんと熱燗」と注文しロープウェイ下山になるのは目に見えるので、後ろ髪を引かるのを感じながら縦走路を突き進む。

旗振茶屋

13:19
鉄拐山頂上とその巻き道、そして旧妙見堂の分岐点。ここの道標はややこしく、公設ぽい案内板は鉄拐山頂上を指し「六甲全山縦走路→」と、神戸ヒヨコ登山会・旗振支部の案内板は巻き道を「←六甲全山縦走路」と表示している。でも神戸市の公設標柱は左側の巻き道を「全山縦走路」として鉄拐山の一文字もない。従って巻き道を進むことにするが、2万5千分の1地形図にも記載されている山を越えずして六甲全山縦走と呼ぶことができるのか疑問が膨らんでいく。

鉄拐山山頂も通らない

点名:立原谷の三角点はどこかと、きょろきょろしながら「おらが山」への階段道を下るが分からない。帰ってから調べると階段道の入口近くにあるようで、別に自分を三角点標石愛好家とは意識していないがもう一度行かねばならないなと思った。そういえばシュラインロードでも見逃していたことを思い出してしまった。

13:33
今度はおらが茶屋だ。あの独特カレーをまた食べたくなる誘惑にかられるが、カレーだけで満足できるわけはなく、脇目を振らないように真正面を見据え突き進む。昼間の六甲山は私をかどわかすものが多すぎる。

独特カレーが名物の「おらが茶屋」


栂尾山・須磨アルプス・東山

13:35
高倉台から栂尾山に登る400階段が有名だが、おらが山から高倉台に下る300段以上もある階段も物凄い。踊り場で左右に振り全貌を見ることはできないが、逆に登ったら踊り場が偽ピークのように見え、登っても登ってもピークに辿り着かないあの山(誰にも経験があることだろう)を思い出すことだろう。

高倉台への下り階段

階段を下りた先の、本日の一番目の住宅街「高倉台」は道なりに進めばよいので、迷えと言われても迷いようがない。でも、六甲全山縦走ではいかにして住宅地をルートを違えずに通り抜けられるか、特に単独行の場合は死活問題となりかねないので、事前に十分な調査とそして試走が必要だ。

14:55
さつき橋、さくら橋、やまぶき橋、つつじ橋と渡り高倉台団地を抜けると、これで三度目の経験となるが恐れていた栂尾山への400段階段が待ち構えている。でも私の勤めているビルのエレベータ全12基が一斉に故障するという不可解な事象があり、13階のオフィスまで5回ほども上り下りを経験しているので400段ぐらいなんてことはない。

あの時の詰まらない階段室を上り下りするよりは、振り返ると展望がどんどん広がるこの400段階段の方がよっぽどよい。

高倉台から栂尾山への階段

14:11
400段階段を登り終えてから一登りで栂尾山の頂上だ。頂上には展望櫓が立ちここまで登ってきた山々の大展望が広がっているが、その眺望は登った人しか味わえない。

ここを出て少しで、急に風が強くなり小粒の雨がポツポツとしたが、幸いにもすぐに治まりほっとした。

栂尾山頂上展望台

14:28
地形図にも記載されいる横尾山に着いたが、前後が緩やかでピークらしくないところにひょっこりと三角点標石が現われ、ここが横尾山と気づくくらいだ。南面だけが伐採され展望の窓が広がっているが、今日はぼやーとしていて感動はない。なお、三角点標石は基部まで露出していて、そのうちに盤石が現われるじゃないかと心配になるくらいだ。

横尾山頂上 展望少しあり

14:42
西六甲縦走路(聞いたことがないが)のハイライト、須磨アルプスが間近に迫ってきた。外国には行ってはならないという家訓があり、本家のアルプス(ヨーロッパにあると伝え聞くが)に行ったことなどないが、日本では岩肌が露出した地形が少しでもあると〜〜アルプスと呼ぶ慣習があるようだ。

でも、花崗岩が風化して創りあげられたこの地形は、見るものを圧倒する力を持っている。

須磨アルプスへと下る

馬の背には、かつての固定手摺あるいは鎖の支柱の跡だろうか、狭い岩場の中に邪魔な出っ張りを残している。六甲全山縦走路の中では最大の難所中の難所と言えるが、幅は十分にあり問題はない。ただし、今回の山行では間違ってもここで夜にならないように開始時刻を設定している。

馬の背

15:00
東山に着いたが、ここまでで3時間もかかっている。普段の山行なら下山している時刻で、いつになったら宝塚まで辿り着くのかと心細くなってくるが、今日は時間の心配をする必要が全くない。

東山山頂から来し方を振り返る


住宅地に挟まれた高取山

15:27
東山頂上からは全山縦走路の標柱に従い新道を下り、二番目の住宅地に。あっという間の下山だったが、地形図を見ると標高差は百数十メートル程なのでほんとにあっけない。下山中にこれから東山へ登るハイカーに出会ったが、この後は最後までハイカーに会うことはなかった。

この辺りに住んでいる人の中には、須磨アルプスを散歩コースにしている人が必ずいると思う。山好きにとっては、妬ましくなるほどの羨ましい住環境だ。

東山を下り切り住宅街に

初めて通るものにとっては迷路のごとき住宅地の中を行く。しかし、世の中には奇特な方がいて、六甲全山縦走路を市街地を含めて、写真を多用してこれ以上は不可能と思われるぐらいに詳細に紹介しているHPがある。私が頼りとしているのは六甲山麓で、それによると右・左・右・右・右・右・右・左・右と進むと下の写真の高取山の登り口に着く。

15:58
30分ほどの街歩きの途中で自販機で飲み物を仕入れ、野地山公園脇の高取山のとりつき に到着。今回は二回目なので脳内地図に従ってすんなりと歩けたが、一回目は六甲山麓の案内を印刷したのを参考に何とかかんとか辿り着いた。

ここが高取山の登り口だ

西から登る高取山は険しい。山上に神社がある山とは思えないほどの、全山縦走路の中でも一二を競う悪路の急登が続く。おまけに標高差は200m以上もあり、縦走路中で私が一番嫌いな区間だ。

16:26
高取山西側の三角点標石のあるピークには、春日神社と荒熊神社が祀られている。

「山歩きの皆さん元気げんき、この石段を登ったら三角点あり、展望抜群!! すぐ合流します」と神社への石段を登るように誘う案内板が二枚もあるが、残念ながら縦走路はピーク南を素通りしてしまう。

春日神社・荒熊神社は素通り

16:33
水平道を進むと東側のピーク、地形図で高取山と表示されているピークには高取神社の社が祀られている。

でも「境内及び階段のコンクリート舗装は、登山靴で歩いたり、走ったりするとこわれます。ハイキングをされる方は、下の道を迂回してください。 高取神社 神戸市」の警告板があり、西側の神社とはえらい違いだ。ここも縦走路はピーク南側を素通りしている。

ハイカーを嫌う高取神社も素通り

迂回路を行くと、高取神社への石段に合流し月見茶屋の軒先を通る。営業終了時刻を過ぎているようで店は閉まっている、というか辺りには誰もいない。常連さんは毎朝6時のラジオ体操に参加するため、もう床に入っているのだろうか。

月見茶屋は営業時間終了

16:46
安井茶屋先の市民トイレのある広場にてしばし休憩し下りに備える。まだ日は高いのに参詣者・ハイカーの姿は見えず、広場の隅で安井茶屋の昔はお姉さんが後片付けをしているだけだ。

16:55
高取山、下山開始。登りとは打って変わって緑豊かな、緩やかな道を下っていく。

17:07
今度もあっという間に下山し、三回目の住宅地に下り立った。ここから神電鵯越駅までが迷路というよりは、ゲームの世界の中だけに存在すると思っていた迷宮そのものだ。

また住宅地に下りる


次は菊水山だ、明るいうちに登れるかな

17:42
広大な実物大の迷宮を記憶だけを頼りに進み、一度も間違うことなく鵯越駅に到着。山中を歩くよりも緊張した半時間ほどの街歩きだった。

ここから大竜寺まで飲み物の自販機はないので、駅前で2本ほど仕入れる。日没時刻の18時42分までに菊水山頂上に辿り着けるだろうか。

鵯越駅脇の小路に入る

18:06
石井ダム工事中は通れた道が閉鎖されていて、旧菊水山駅の下を通る道で登山口に向かう。ハイカーには全く出会わなくなったが、鈴蘭台下水処理場脇の坂道では、バイクのお姉さんの後を「キャンキャン(待ってー)、キャンキャン(待ってよー)」と必死に追うヨークシャーテリアを見た。凄い散歩もあるもんだと感心してしまった。

石井ダムの工事が終わり菊水山駅跡へ左に入る

18:14
石井ダムの下流で烏原川にかかる橋を渡ると、道は遊歩道から登山道に変わる。

石井ダム

「菊水山 あと900m 兵庫登山会」の表示のある休憩所で、菊水山へ急登を少しでも遅らせたくなり10分ほど休憩。この登山道をより登りやすくと、地道に改良補修している人がいるようで来るたびに登りやすくなっている。

18:50
遂に日没時刻を過ぎて薄暗くなってきたが、灯りはまだ必要ない。夜間登山は富士山での4回の経験はあるが、単独では初めてでワクワクするばかりで心細さは全く感じない。

日が暮れてきて暗くなってきた

19:01
誰もいない、真暗になりかけている菊水山頂上に到着。少し寒くなってきたのでフリースを一枚着込み、ヘッデンを付ける。まだ空には明るさが残り夜景に輝きがないので、夕ご飯とする。コンビニのオニギリトリオ(380円)だけであまりにも味気なく、次回はもっと豪華な温かいものにしようと思うが、ストーブや燃料やで重くなるのが問題だ。

19:30
空が暗くなり夜景が輝き始めたので写真を撮ってみるが、暗すぎてピントがオートでは合わず、かといってマニュアルで合わせようにもファインダーが暗く難しい。こんなことならコンパクトデジカメの方がきれいに撮れるかもしれない。

菊水山からの夜景
中央はポートアイランド


夜歩き開始、鍋蓋山から市ケ原

夜歩き装備は二つだけ。おでこに付けたヘッドランプはナショナルの2年ほど前の製品でBF-199という、白熱球からLEDへの過渡期のもので、クリプトン球のスポットライトとLEDの拡散光の切替式。はっきり言って現在のものに比べたら暗いと思うが、暗闇を楽しみながら歩くには最適と思う。

もう一つはザックに付けたキャッツアイのコンパクトセーフティーライトSL-LD100R(レッド)、赤色LEDの常時点灯・点滅・ランダム点滅の3モードを備えた優れもの。これは点滅モードで使用し、主に車路歩きの車対策。

19:35
いよいよ待望の夜歩きを始める。二ケ月前からの下調べ通り、月齢は10.6(15が満月)で星空を楽しむことはできないが、月の光が差し込む林は驚くほど明るく感じる。逆にライトを点けてしまうとその淡い月光が消えてしまい、周囲に暗闇が広がる。

(市街地が近いので車の走行音が聞こえるのには耳を塞ぐと)風は弱く静かな林の中には私の足音と、ダブルストックの音しか聞こえない。

19:57
天王谷川へと下る城ケ越の険しい道は、昼間に通ると住宅地が間近に見えて味気ないが、夜はその町の明かりが輝き、物凄くきれいで思わず写真を撮ってしまった。

下の写真、暗くピントを合わすのが困難なので絞りは8.0、ISO感度を800まで上げたがシャッタースピードは15秒。じっと止まっているのが大変な夜間撮影だが、ストロボを使ったのでは雰囲気がでない。

城ケ越の険しい道を下っている
赤いのはセーフティライト

「暗い谷道のそばに薄気味の悪い池」私の山歩きで最も嫌いな風景で、幼い頃なにか怖い思いをしたのかも知れない。天王吊橋の手前の砂防ダムの池が正にそれなのだが、ヘッドランプさえ向けなければ月光で水面が薄っすらと見えるだけで、いやよけいに怖いじゃないか。

20:25
天王吊橋に着いた。下を通る有馬街道の北行きが多少渋滞気味だが、皆なこんな時間にどこに行こうとしているのだろうか。

橋を行ったり来たりしながら写真を撮っていると「ガシャン」と鈍い音が。

天王吊橋を渡っていると
ガシャンと追突の音が

おでこにヘッドランプを、ザックには赤色の点滅するセーフティライトを付けた私が、吊橋を行ったり来たりするのに気をとられたのかな。いや単に渋滞のせいと思いたい。

ナイトメアが最初にとりついたのは私ではなく、吊橋の下に止まってる二台の車の人たちのようだ。徐行中の追突だったので大きな怪我はしてないだろうが、子供が泣き叫び阿鼻叫喚の世界を繰り広げている。連休初日から運の悪い人たちでかける言葉もない。吊橋を渡り、鍋蓋山への急坂を大分登っても下から子供の叫び声が聞こえていた。

夜の山道で写真を何度か撮ったが、全て下のようなわけの分からないものしか撮れないが、夜空が月光で薄っすらと明るいのが分かる。

後から見るとこんな感じ

21:15
鍋蓋山頂上に着いた。当然誰もいない。おにぎり(フックラテマキカラシメンタイコ 135円)を食べてから、夜景撮影に取り掛かる。歩いて登るしかないここ鍋蓋山からの夜景を見た人は少ないだろう。ここで25分ほど休憩・写真撮影をして次の大竜寺を目指し出発する。

鍋蓋山頂上からの夜景

自分の足音以外には鳥の鳴き声も、木々の枝葉がこすれる音もしない。立ち止まりヘッドランプを消してみると、月明かりだけが射す本当の静寂の世界が広がり心が落ち着く。しかしながら、再度山ドライブウェイからの爆音が響いてきて現実に引き戻される。

22:18
大竜寺石段下の広場に着いた。昼間なら多くの参詣者やハイカーが行き来するところだが、この時間では誰もいない。

ここにある自販機を当てにしていたのだが、昼間の喧騒の名残かことごとく売り切れている。飲み物を切らしていて困ったが、もうすぐの市ケ原に自販機があるさと、気楽に考え通り過ぎる。

大竜寺石段下の広場
自販機は全部売り切れ

22:27
大竜寺の山門の前は再度山ドライブウェイで、妻その1に現状報告の電話を入れていると3台の車が北へと猛烈な爆音を立てて猛スピードで走り過ぎていく。私には彼らのように車を運転する勇気はないが、彼らも私のように一人で山道を歩く勇気などないだろう。まあ、適材適所で世の中はうまく成り立っているようで、喜ばしい限りだ。

大竜寺山門前の
ドライブウエイはレース場

大竜寺山門から車道を渡り、舗装道路を市ケ原に向け下る。道路の終点にはおそらく新神戸トンネル用の排煙機場、あるいは非常出口か施設があり、その先は狭い地道になり布引谷川へと下る。

22:47
昼間は賑やかだったろう市ケ原の、流れにかかる木橋を渡る。本当は月明かりでほんのりと明るいが、デジカメの閾値以下の明るさなのだろう。

市ケ原の木橋を渡る

22:52
当てにしていた桜茶屋の自販機は、なんとなんと全て電源が落とされている。飲み物は全て飲みつくしてすっからかんで、これでは次に自販機のある摩耶山掬星台へは辿り着けそうもない。予想もしないこんな事態で全山縦走を中止しなければならないのかと、唖然、呆然。

新神戸駅へ向けとぼとぼ歩きながら、姫路行きの最終は確か0時半ごろと思うが間に合うだろうか、いや街中まで下って買い込めば何とかなるな、などなどと考えつつ「あけぼの茶屋」前を行く。次の「紅葉茶屋」には自販機があるが照明は消えている。でもよく見ると「販売中」の小さな表示灯が点いているではないか。

お金を入れると照明が点き、売る切れもなく欲しいもを買うことができた。こんなにも自販機の有難みを感じたのは生まれて始めてのことだ。

23:16
24分のロスタイムで桜茶屋まで戻る。


摩耶山への次第に辛くなる登り

23:27
全山縦走路を進みツエンティクロスと天狗道との分岐点に着いた。夜歩き好きなハイカーがいて、出会うのを楽しみにしていたのだがまだ叶わない。ハイカーは「夜間登山は危険」という世間の常識に縛られた謹厳実直なモラリストばかりなのだろうか。

天狗道も稲妻坂も驚くほどよく整備されている。当然ながら整備とは階段道造りのことで、夜歩きでも歩きやすくはなっているが、味気がない。

もうすぐ真夜中になるが、ハーブ園では煌々とした灯りが燈されている。昼間にできない手入れを夜間作業でしているのだろうか。

天狗道の丸太階段道を登っている

0:24
日が変わり、学校林道からの道が合流してきた。ここまでの天狗道は昼間でもきついのに、夜はなおさらきつく感じた。おまけに歩き始めてから12時間が経ち、これまでこんなに長く歩いたことのない足が悲鳴をあげ始めた。こんなことは今までになかったが、両膝が「もう歩くな」と主張している。でも歩みを止めるわけにはいかない。

1:12
暗い道を痛みをこらえ黙々と登り、ようやく中継鉄塔の立つ摩耶山山上に辿り着いた。そして中継施設脇を行くと、いきなり人感センサーが働いたのか強力なライトが私を照らし出した。驚くじゃないか。

摩耶山山上の中継鉄塔に辿り着いた。

掬星台からの夜景は噂にたがわず素晴しい。時間が遅いので下界のライトアップは終わっていているが、正に一千万ドルの夜景だ。こんな時間でも若者達は、羨ましいカップルで、男女のグループで、そして男だけのグループでと次々とやってきては、感嘆の声を上げている。夜景を撮り終えた私は、その後のベンチにへたり込んでトッテオキソーセージピザパン(130円)をもぐもぐと頬張る。

掬星台の1千万ドルの夜景


記念碑台へ

2:04
掬星台で30分ほど過ごし、記念碑台を目指し歩き始める。私の今回の六甲全山縦走はもうすぐ100%破綻するのが見えているのに、縦走路を歩くことに執着しオテル・ド・マヤからアゴニー坂へと下っていく。頭も足と同じく疲れてきて臨機応変な対応が取れなくなっていたようで、今思えば掬星台でビバークするのが最善の判断だった。

まだ水平道なら普通に歩けるが、アゴニー坂の荒れた下りはきつかった、いや痛かった。

アゴニー坂を下っている

アゴニー坂を下り終えてから自然の家の先で山道に入るまでは、車道を歩く以外に選択肢はない。しかし、民家のないこの辺りは、二車線幅をいっぱいにタイヤを鳴らしながら爆走する適材適所の人たちの車が怖いが、彼らも夜間歩行の私が怖いと見えて大きく避けて走り過ぎて行く。暗くて分からなかったが、帰宅後調べてみると進行方向左側に歩道があることが分かった。なんだ左側通行をすれば怖い思いをせずにすんだのか。

私のようなナイトハイカーには関係ないが、トイレには照明が点いているのと真暗なのがあるが、杣谷峠のは煌々と点っていた。少し寄り道をして夜の穂高湖を見てみようと思っていたのだが、すっかり忘れていたし、写真もほとんど撮っていないし、疲れは最高潮。

自然の家の先で三国池へと続く石段の道が始まる。車道をそのまま行くと遠回りになるので仕方なかったが、痛む足では登りたくない道だ。いつまで続くのかヘッドランプの光の中に階段道が次々と現われ続ける。

3:31
全山縦走路は車道を渡り急な階段となってさらに続くが、もうだめ。東屋のベンチで10分ほどへたり込んだあと、最後の気力を振り絞って車道脇の歩道(ここでは右側)を進むことにする。登り階段道ではあれほど痛んだ膝が、平坦な歩道を歩く分にはなんともない。ん、これなら宝塚まで行けるかな。

4:00
丁字ケ辻、前ケ辻、六甲山ホテルと過ぎて、記念碑台の『階段下まで』快調に歩みを進める。

が、記念碑台への階段が登れない。一歩一歩が足が鉛に、いやさらに比重の重い金になったように(黄金の足は実は物凄く重い)感じた。これ以上はないと思える艱難辛苦のすえ、ようやく記念碑台への階段を登り切ることができた。そんなこんなでナイトメアは私の膝にとりついてしまったが、ここまでそれなりに楽しい六甲全山縦走を楽しむことができたのでよしとしよう。

記念碑台のグルーム像

記念碑台中央の屋根の下のベンチに寝袋を広げビバーク開始。日出は5時12分なので30分もしたら明るくなるだろうが、六甲ケーブルの始発7時10分に間に合うように目覚ましをセットし眠りにつく。



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