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たま駅長に会いに和歌山電鐵貴志駅へ



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平成22年9月20日(月)  メンバー 一人法師でも寂しくないもん

JR姫路駅〜JR和歌山駅〜和歌山電鐵貴志川線貴志駅


和歌山電鐵貴志川線貴志駅のスーパー駅長たま

 このHP、播州野歩記(ばんしゅうのあるき)は、播州地方を中心とした山野歩きを記録するホームページのはずが、最近はもうほとんど関連もなにもないものが幅を利かせて、作者自らもその行く末が案じられる始末だ。まあ私の防忘録の役割さえ果たせたら、それ以外はおまけという事でOKとするか。

 そんなわけで今回のテーマは、和歌山市と紀の川市を結ぶ路線長14.3kmの和歌山電鐵貴志川線と、終点貴志駅の「たま駅長」だ。

 貴志川線は2006年(平成18年)3月31日までは南海電気鉄道が経営してきたが、あまりの赤字続きで嫌気が差し放り出たものを、和歌山県・和歌山市・貴志川町(当時)の支援のもと岡山電気軌道の親会社両備ホールディングスが経営を引き継ぎ、『和歌山電鐵貴志川線』として再出発した路線だ。

 それだけならよくある三セク鉄道話と変わりなく、さらに赤字を垂れ流し続けて結局は消えていく運命が待ち構えていただけだろうが、和歌山電鐵は違った。三セク方式ではなく、100%民間出資の和歌山電鐵が設立されたのだ。そして「いちご電車」を運行するなど経営努力に努めたが、そのままではジリ貧に陥ること間違いがない。

 だが和歌山電鐵に救世主が現われたのだ。三毛猫「たま」とその母親「ミーコ」は貴志駅の売店小山商店の世話を受け暮らしていたが、和歌山電鐵の開業にともいない土地は南海電鉄から公有地となり住んでいた猫小屋を追い出される羽目に陥ってしまった。

 飼い主は困り、2006年4月1日の開業記念式典後に和歌山電鐵社長(両備グループ代表)に猫たちを貴志駅の中に住まわせてもらえないかと頼んだところ、社長は快諾したという。それからも「たま」たちはまねき猫として働き2007年(平成19年)1月5日に「たま」は貴志駅駅長に、「たま」と同居していた「ちび」は同駅助役に任命された。

 和歌山電鐵はそれからも「おもちゃ電車」、「たま電車」と矢継ぎ早に運行を開始し、「たま駅長」の人気も全国的に盛り上がり、日本国中から「たま駅長」に会うために和歌山に大勢の人々がやってくるようになった。私もその中の一人だ。


姫路から和歌山は遠い遠いめちゃ遠い

9:57
 JR和歌山駅に到着。私の地元、JR姫路駅を7時10分の電車に乗ってやってきたが、JR和歌山駅まで約3時間。さらに貴志駅まで片道で30分を要する。

 和歌山電鐵の駅はJR和歌山駅の中に9番線ホームとしてあり、地下道から階段を登りICOCAカードを読み取り機にタッチし清算し9番線ホーム和歌山電鐵駅に入る。終点の貴志駅まで往復720円かかるが、貴志川線一日乗車券は650円とお得となっている。

 但しJR和歌山駅改札外の券売機で他社線連絡切符として和歌山電鐵の切符は買えるが、貴志川線一日乗車券は9番線ホームの中間改札でしか買えず乗り継ぎ客しか利用できない。それではどうすればよいのかというと、JRの有人改札口で「和歌山電鐵へ行きます」と言えば入場券も何も持っていなくても通してくれる。なんか変だが本当らしい。

 中間改札横に長テーブルを置き、「たま駅長」グッズを販売している。商売熱心というか、千里の道も一歩から、継続は力なり、これくらいしないと赤字経営から黒字に転換するのは難しい。

JR和歌山駅9番線ホームが和歌山電鐵の駅だ
「たま電車」が写っているのは帰りに撮ったから

10:00
 9番線ホームに待っていたのは真っ赤な2両編成の「おもちゃ電車」。ローマ字表記だと「OMO」とか「OMODEN」とか「OMOCHA DENSHA」。けしておもちゃの電車ではなくおもちゃ箱や子ども部屋をイメージしたデザインとなっている。

 南海電鉄から和歌山電鐵への経営移譲に伴い、それまで使われていた貴志川線専用の6編成(架線電圧600V・1500V対応、ワンマン運転対応)が無償譲渡され、和歌山電鐵が内外装を改装したもので、このほかに「いちご電車」と「たま電車」がある。残る3編成は南海時代のままの内外装で「はずれ電車」とでも呼ばれているのかもしれないな。

9番線ホームで待っていた「おもちゃ電車」

 2両編成の電車の中は、木製の床、木製の吊り輪、木製のシートと温もり溢れる仕様となっていて、ガチャポンがあったり、おもちゃがショーケースに飾ってあったりで見ているだけで楽しくなってくる。

 私が毎日利用する姫路駅からのJR新快速電車なんか最高速度は130kmも出るが、殺風景な殺伐とした通勤風景が毎日毎日続くだけで、単なる移動手段というかもう乗りたくないというか、えらい違いだ。

わぉ、電車の中にガチャポンがある

 シートの種類もいろいろとあり、面白い。なお、和歌山電鐵の全14駅の中で有人駅は和歌山駅と伊太祈曽駅(なんて読むのだろう?)の二駅のみで、終点の貴志駅を含む残りの駅は無人駅で、おまけに車両は全てワンマン運転で、運賃収受の仕組みはほとんどワンマンバスと同じで、同じように整理券発行機・運賃表示板・料金投入箱が設けられている。

全てロングシートだ

 石炭ストーブのある客車には乗ったことがあるが(夏だったので取り外していたのは残念だった)、ベビーサークルがある電車なんか始めて見たぞ。鉄道車両には座席定員とか、吊り輪の数も入れた定員とかがあると聞くが、このベビーサークルの定員は何人なのだろう。2歳児ぐらいなら詰め込めば10人は入りそうだが、クッションは3個しか用意されていないから、定員は3人と見た。

ベビーサークルだ


貴志駅の「たま」駅長はおねむ

10:50
 10時20分に和歌山駅を出た「おもちゃ電車」は、伊太祈曽駅で「たま電車」とすれ違い、30分ほどかけて貴志駅に到着。

 「いちご電車」は臨時の車両点検のため当分の間運休中なことや、帰りに乗るつもりの貴志駅を11時56分に発車するのは「たま電車」だとか、「たま駅長」は日曜日は出勤しないことや、貴志駅には駐車場がないことなどは和歌山電鐵の公式HPを見たら分かるので、事前に目を通しておくことを薦める。

「おもちゃ電車」は30分かけ貴志駅に到着

 貴志駅のホームには祠が三社祀られている。鳥居の扁額は、和歌山寄りから「おもちゃ」、「ねこ」、「いちご」とあるが、祭神や由緒、どのような神事がいつ執り行われるかは分からない。貴志駅の建替えに合わせて祀られたようだが、変なの。

貴志駅のホームには三社の祠が祀られている

 運行本数は平日・土曜・日祝日ともあまり変わらず、ほぼ1時間に2本。時刻表にも「たま駅長」が描かれているが、駅舎の至るところに「たま駅長」が存在している。いっそのこと「貴志駅」から「たま駅」に変えてしまえばよかったのに。

1時間に2本とローカル線にしては多いな

 ホームから、今年の8月4日に竣工したばかりの真新しい駅舎『たまミュージアム貴志ステーション』へは階段を下りるが、車椅子対応のスロープやトイレもある。駅舎の和歌山よりは、待合室を兼ねた果物のジュースやジェラートや「たま駅長」ブランドのお土産を販売する「たまカフェ」(定休日は毎月第3水曜日)があり、反対側は「たま駅長」室と「たま駅長」の飼い主が経営する雑貨と食品と「たま駅長」グッズの「小山商店」(定休日は日曜日)がある。

人だかりがしているところが「たま駅長」室かな

 駅長室の前は人だかりができていて、しばらく待たなくてはならない。

凄い人気だな

 縦長のガラス窓の中が「たま駅長室」だ。旧駅舎時代は改札口に座って招き猫をしていたこともあったようだが、今はすっかり箱入り娘となっていて撫でることなどはできない。

ガラスの向こうが駅長室だ

 猫は衣食住が満たされていれば、暇さえあれば寝ているのが普通だが、「たま駅長」は御年11歳、人間に例えたら還暦で、もう寝てばかり。結局帰るまでには起き上がることはなかった。

 駅長室は暗く、おまけに前面のガラスに自分や他の人が映り込んだりで、写真は非常に撮りにくく、フラッシュも禁止(もちろんストロボもスピードライトもだめ)だ。きれいに「たま駅長」を撮りたかったら、三脚とPLフィルターと明るいレンズを持って平日の人の少ないときに行くしかないと思う。

向うを向いて寝ている「たま駅長」

 貴志駅は「たま駅長」尽くしで、どこを見ても「たま駅長」がいる。駅舎の掛け時計も「たま駅長」で、どこで買うことができるのか私も欲しくなってきたが、おそらくワンオフなのだろな。

掛け時計も「たま駅長」

 駅車内の待合室はカフェも兼ねていて、その名も「たまカフェ」という。メニューには地元特産の果物を贅沢に使ったジェラート(氷菓)とジュースがあるが、軽食類はない。

 「たま駅長」が焼印された「たままんじゅう」なども販売しているが、収益で貴志川線の赤字を少しでも解消するためか少々値が張るような。

待合室兼「たまカフェ」

 私が注文したいちじくジュースは、目の前でジューサーにかけられ、まさにフレッシュジュースの名に恥じないものでとても美味しかった。カップは安っぽい使い捨てのものだが、「たま駅長」がプリントしてあり、収集癖のある方ならお持ち帰りしたくなるかも。

「たま駅長」が泳ぐ「いちじくジュース」

MENU

ジェラート
貴志川いちごジェラート300円
ミルクジェラート300円
巨峰ジェラート300円
  
フレッシュジュース
いちじくジュース300円
いちじくミルクジュース300円
巨峰ジュース300円

TAMA CAFE

 「NANKAI 施設部」と表示された保線用車両が留置線に留められているが、保線業務は南海電鉄に委託しているのだろうか、それとも車両だけ借りているのだろうか。この保線用車両も三毛猫柄に塗るとか、「たま駅長」の姿を書き込むとかすれば面白いな。

貴志駅留置線の保線用車両

11:20
 南海色の「はずれ電車」がやって来た。

 和歌山電鐵貴志川線はJR和歌山駅からここ貴志駅までで、かつての経営者であった南海電鉄の線路とは直接つながってはない。どうしても「たま電車」を南海電鉄の線路を走らせたかったら、JR和歌山駅と南海和歌山市駅間のJR紀勢線を通らなければならない。

南海色のままの「はずれ電車」


駅の外に出てみようか

 駅舎とホームをうろうろするのも飽きてきたし、外に出てみることにする。新装開店した貴志駅駅舎は、外から見ると猫の姿をしているというが、丸くなって寝ているのだろうか、それとも香箱座りをしているのかな。

 外に出る前に「たま駅長」のご機嫌伺いに行くと、あいも変わらず向こうを向いて寝ていらっしゃる。ん、ん、左前足の肉球が見えているぞ。

「たま駅長」あいも変わらず寝ているが、肉球が見えているぞ

 これが木造平屋桧皮葺の「たまミュージアム貴志ステーション」だ。屋根の鴟尾が猫耳、ステンドグラスが嵌められた明り採りの高窓が猫目、入口が猫口になっている。「たま駅長」というよりは巨大化け猫のように見えるが、インパクトは大きかった。

 そして駅舎正面でシェーをしているのは、ほかならぬこのHPの作者本人なのだが、なぜシェーをしているのかと聞かれても私にもよく分からない。大勢の人々がいる中でシェーをして恥かしくないかというと、もう慣れてしまいなんとも感じない。ただ、誰もが私から目を背け、無関心を装おうとするのが面白い。

たまミュージアム貴志ステーション

 駅舎の「たま駅長」室の裏手に小山商店が併設されている。駅舎内部ではつながっていなく、一度外に出ないと入れない小山商店の中は撮影禁止だ。

小山商店

 出迎えの車以外の一般車は駐車禁止で、狭い駅前広場(道路)には知ってか知らずか「たま駅長」目当ての車も入ってくるが警備員に追い返されてしまう。自家用車で来るなら、和歌山駅か伊太祈曽駅周辺の駐車場に止めて、貴志川線に乗ってくることを和歌山電鉄は推奨している。

 駅前には「名物たこ焼き」の店もあるが閑古鳥が鳴いている。ソース味、醤油味、しお味の三種類があり5個100円、10個200円、15個300円となっている。ソース味と醤油味は理解できるが、しお味のたこ焼きとはいかなるものなのか、残念ながら買い求めなかったため、どのような味なのかは分かず、なんで買わなかったのかと後悔しまくり。

貴志駅前の名物たこ焼き屋さん

 観光地によくある顔出しボードの「たま電車」バージョンが、駅前の自販機があったりテントが張ってあったりする、ちょっと雑然とした一角に置かれている。本物の電車かと見間違うような非常によくできた「たま電車」の窓から顔を出して、「たま駅長」とツーショットが叶うという優れもののなのだが、背景がちょっといただけない。

「たま電車」顔出しボードでパシャパシャパシャ

 業務連絡なのか、「たま駅長」グッズの緊急搬送なのか、和歌山電鐵の社有車(ニッサン・バネット)が貴志駅にやって来た。その車は三毛猫柄に飾られ「TAMA VAN」と命名されている。

 このほか「たま駅長」シリーズの車両は、和歌山電鐵の親会社両備グループの岡山電気軌道に「たま電車」が、両備観光に「たまバス」なる観光バスと、そして伊太祈曽駅にはレンタサイクル「たま自転車」が存在するという。

和歌山電鐵の社有車「TAMA VAN」


「たま電車」に乗って帰ろう

 次の和歌山駅行きの「たま電車」は11時56分、その次は1時間30分後の13時26分なので、名残惜しいがそろそろ和歌山駅に戻ろう。

 その前に「たま駅長」の最後のご機嫌伺いに行くと、「わぉ、頭をもたげたぞ」。ガラス越しとはいえ大勢の観光客に見つめられ続けても、我関せずと眠り続けられるのが凄い。私には絶対に務まらない。

頭をもたげる{たま駅長」

11:50
 大勢の「たま駅長」ファンを乗せた「たま電車」が貴志駅に到着。子ども達にも大人気で、みんなよい表情をしている。

貴志駅に到着した「たま電車」

 「たま電車」も「おもちゃ電車」と同じく、木製の床に木製のロングシート。座っているだけで楽しくなる電車だ。

和歌山よりの1号車

 もう皆写真を撮りまくり放題。

同じく1号車

中吊り広告も「たま駅長」

シートにも「たま駅長」が

2号車の床には木象嵌で猫の足跡が

その先には「たま駅長」乗車時の指定席のケージが

12:27
 11時56分に貴志駅を発車した「たま電車」は30分ほどで和歌山駅に到着。貴志駅でほぼ座席の埋まっていた「たま電車」だったが、マイカーで訪れた家族連れは伊太祈曽駅で下りてしまい、和歌山駅まで乗車したのは半分以下だった。

和歌山駅に到着した「たま電車」

貴志駅よりの2号車

和歌山駅よりの1号車
2両合わせて101匹の「たま駅長」が貼られているという


お昼ごはんは「和歌山ラーメン」

 和歌山駅の構内放送が「天王寺駅の信号故障のため和歌山線は運休しています」と繰り返し流している。私は和歌山城観光などをして南海電鉄和歌山市駅から帰る予定なので影響は受けなかったが、困ったものだ。

 和歌山城方向へ、走る車も歩行者も少ない「けやき大通り」をぶらぶらと5分も行くと「和歌一ラーメン」というのがあり入ってみた。結構美味しかった。

けやき大通りに面した和歌一ラーメン

食べたのはチャーシューメン(750円)

 この後の和歌山城観光や、趣味の野外彫刻巡りは「たま駅長」とは関係がなくなってくるので、本日の山行記録(和歌なので行記録なのだ)はこの辺で終了とする。



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